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ところがMediumも最高だとは思っておらず…比較優位で決めました。

  • プレーン・シンプルなエディタで、
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  • コンテンツのファインダビリティはSNSに完全に預ける

といったブログサービスが待ち遠しいです。Github Pagesをいまから再構築するのは時間が足りない…

ターン・アラウンド - 『ザ・会社改造--340人からグローバル1万人企業へ』

ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

三枝最新作を読んだ。

評価 : ★★★★☆

僕は新卒で丸紅という総合商社出身なのだが、このストーリーの舞台となるミスミは「戦闘商社」というイメージ。商人気質、少量多品種を短納期で納める圧倒的オペレーション、そして商社の枠を超えた生産能力からそういうイメージが有る。

本著は三枝氏がミスミ社外取締役時代に創業社長から社長就任の打診を受け、そのバトンを渡されるところから始まり、

  • 前任時代から続く戦略なき多角事業の閉鎖
  • 海外事業の”垂直”立ち上げ
  • 生産機能の保有、M&Aと長年をかけたPMI
  • 生産改善 - カンバンとKPI導入

など、正論・戦略、そしてなにより泥臭い地震の実行力をもってミスミを改革した様が描かれている。

と、途中で何度か挫折しかけた。事実、三枝氏の著書はテストステロン分泌量の多さからかオラオラの表現が多い(笑)が、「よく動く手に精密知能がついたような経営スタイル」は組織論に傾倒する経営者のそれと一線を画し僕は好きである。ターンアラウンドマネージャーのような、「創業者ではない立場からしがらみを断ち切り改革を断行する」というタフな経営スタイルにはピッタリなのだろう。

V字回復の経営など、著書は殆ど読んできたが、過去の著書と大きく異なった点がいくつかある。

  1. 実名 - ミスミという会社名が、登場人物がほぼ実名。過去の作品である『V字回復の経営』は匿名で描かれていたが、これがコマツの改革案件であったことも明かされている。
  2. 実働 - コンサルタントという外部からの切り口ではなく、ミスミの創業者からバトンを受け、その後の改革をCEOとして導いた経営者としてのストーリー
  3. 長期 - コマツ案件は2年程度だったとのこと。一方、ミスミのCEO就任から退任までは10年という期間をマラソンしたものだった。

三枝氏がミスミ就任からの10年間という期間の中で様々な経営ケースを追体験できる。一貫して三枝氏の意思決定には「インパクト重視」「未来重視」の姿勢が見える。「同じシチュエーションで自分ならどういう意思決定ができたか?」と問いながら読み進めることで良質なケース問題になった。

以下、引用とコメント。

プロ経営者とは?

特に「プロ経営者」と呼ばれる人たちは、いったいどういった存在なのだろうか。私が目標にしている定義は、  
1. どんな状況の会社に行っても、短期間で「問題の本質」を発見できる人。
2. それを幹部や社員に「シンプル」に説明できる人。  
3. それに基づいて幹部や社員の心と行動を「束ね」、組織の前進を図れる人。  
4. そしてもちろん、最後に「成果」を出せる人。  
有名なカリスマ経営者と呼ばれる人でも、「プロ経営者」とは限らない。ひとつの会社の経験だけなら、「その会社の経営者」にすぎず、そこでしか通用しない経営をしているのかもしれない。プロ経営者となれば、  
5. 業種、規模、組織カルチャーなどの違いを超えて、どこの企業に行っても通じる「汎用的」な経営スキル、戦略能力、企業家マインドを蓄積している。  
6. その裏づけとしてプロ経営者は、過去に、修羅場を含む「豊富な経営経験」を積んでいる。難しい状況に直面しても、これは《いつか来た道》《いつか見た景色》だと平然としていられる。  そして、プロ経営者のもうひとつの特徴は、普通の経営者より高給を取る人だ。プロの野球選手やサッカー選手と同じである。ある日突然、違う組織に移籍しても、1日目から高い技量を見せる。  
7. プロには自然に「それなりの高いお金」がついてくる

個人的には1と4が全てかなと思っている。「問いを正しく問えるか?」「そしてその解き方を開発できるか?」。殆どの課題は問いで決まる。他のメンバーがリソースを割いて解くべき問いを定義する、間違えてはいけない。それがマネジメントの責務だと思っている。プロ経営者ともなれば、なおさらだ。

PPMの有用性

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)理論は、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)創業者のブルース・ヘンダーソンが生み出し、1970年代を「戦略の時代」と言わしめたほど一世を風靡した。戦略論の歴史では、古典的な恐竜ともいえる存在だった。  しかし、その後、PPMは実際の経営現場でほとんど使われなくなる。なぜだろうか。PPMへの批判はいろいろあったが、私(著者)の説明は単純である。  企業の「勝ち負け」や「競争優位」はものすごく複雑であるはずなのに、PPMではそのメカニズムが「成長率」と「マーケットシェア」の2軸だけで説明されている。それが単純すぎるという見方が広がったことが、いちばん大きかったのではないか。つまり、戦略コンセプトとして狭すぎるというのである。
そこで80年代に入ると、多くのコンサルタントや学者がPPMの単純さを超えようとする。「そもそも『競争優位』とは何か」「優位性を構築するために企業は何をすればよいのか」といった視点で、新しい戦略論を次々と出してきた。そのなかで最も有名になったのは、言わずと知れたマイケル・ポーター教授の「5つの競争要因」である。それはまさに「競争優位」のメカニズムを多元的に説明するモデルだった。  世のビジネスマンは、次々と出てくるそうした新しい論理に飛びついて、それらを使ってみては捨て、また次に行くといった、いわば戦略論の「流行」ともいえるような現象が広がった。そのなかでPPMへの関心は急速に失われていった。  ところが、PPMの有用性にこだわり、経営現場でそれを使い続けてきた人がいる。私である。

自社の問題はファネルに。マーケットを加味した環境はPPMで。フレームワークは問題発見のために使う。多くのフレームワークを浅く使うより、徹底してこの2つを使い込んだほうが精度の高い問題発見ができるかなと思っている。

「組織は戦略に従う」

経営者が変わり戦略が変われば、組織や制度も必要に応じて変わらなければならない。古典的な言葉だが、「戦略は組織に従う」のではなく「組織は戦略に従う」でなければならないのだ

この親子関係が逆になってしまう例がとても多いと感じており、以下の2つの記事はそこへの警鐘を鳴らしたもの。

会社の「危機」と、社員が抱く「危機感」は、必ずしも相関しない。むしろ逆相関だと言ったほうがいい。つまり、業績が悪く社員の危機感が高いはずの会社ほど、社内がたるんでいることが多い。逆に、業績がよく危機とは思えない成長企業の社員のほうが、ピリピリしていて頑張り屋である。 なぜだろうか。市場競争に敏感な成長企業の社員は、顧客の考えていることや競争相手の動き、世界の新技術の動向など、会社の「外」の動きに敏感に反応しているからだ。その戦いに後れをとると、社員は自分で「痛い」と思う
それに対してダメな会社では、社員が「内」の論理で動いている。市場での勝ち負けとか、顧客の声には概して鈍感である。何よりも負け癖が付いているから、負けても「またか」と思うだけで、社員はさして「痛い」と思わない。
組織の危機感を高める経営手法は、トップが「危機感が足りない」と叫ぶことではない。経営風土を変えるために、トップが「風土改革をしよう」と叫ぶことでもない。社員の意識を変えるために「意識改革をしよう」と叫ぶ経営者は、経営力が足りないのである。 私(著者)は30代に手がけた3社の経営でその無意味さを学んだ。以来、社内で危機感や風土改革といった言葉を口にしなくなった。しょせん、何も起きないのだ。 会社を変えるとは、経営者が計算し尽くした戦略的なアプローチと具体的アクションの切り込み方を用意し、そのうえでトップ自らが矢面に立つ覚悟で既成組織と既成価値観を突き崩していくことである。

同意でしかない。

「組織のカルチャーは何に最も影響を受けるか?」という問いに対する僕の答えは「リーダーの事業への向き合い方とその勝敗」であると思っている。リーダーとは何も”現状の経営陣”だけではない。むしろオペレーショナル人材が経営層にいる場合、「既成組織と既成価値観を突き崩していく」ことは難しいというのを身をもって体感している。プロダクトのCEOたるプロダクトマネージャーこそ「既成組織と既成価値観を突き崩していく」べき存在ではないだろうか。

  • 常に変化・伸び率の大きな問を模索すること
  • そしてそこに実直に向き合うこと、解き切ること

改めてこの2つに集中すべきだなと思った🤔 以下が所感まとめ。やっていこう💨💨💨

経営の”踊り場”問題

本記事は「経営の踊り場問題」と勝手に呼んでいる問題とその対策について、わざわざクリスマスの夜に行った4つのツイートをまとめ・補記したもの。主にスタートアップや新規事業など「急速な成長」を前提とした組織体を想定している。

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停滞期に起きること

踊り場が目線を内に向ける

リリースした直後は底にいるので、サービスは伸びるしかない。難しいのは伸ばし続けること。ふとしたきっかけで、「日常的な成長」は幻だったと気づく。

こういう時にマネジメントがやりがちな例を挙げると、

  • 「問題の原因や解決策をいろんな目線から多角的に議論する」
  • 「見落としが無いよう、細かなロジックを組み、精緻な計画を再構成する」
  • 「社内の信頼を取り戻すため、組織イシューに着手する」

すべて一見正しそうに見える。しかし内向きで、本質である顧客を向いていないことが多い。これは全て自分が過去にした失敗でもある。

売上は全てを癒す

組織でなく痛みに向き合う

「経営の停滞問題」に直面すると、「良いヒューマンマネジメント」「良いチームづくり」に重きが置かれ、納得感を生み出すことに多くの時間と心が消費される。しかしそれは「問題からの逃避」であると気づかなくてはいけない

停滞している理由はチームマネジメントに失敗したからではなく、顧客の痛みを特定し、解決することができていないからだ*1

解決策は一つしかない。トラクションの成長を取り戻すことだ。こういう状況下で、顧客の痛みを探し出しあてるのはチームの力ではなく、一人の頑固な嫌われ者の熱狂だったりする。*2痛みを突き止め取り除くことだけに集中できるか。

トラクションの成長が戻るとチームは自然と「外向き」に戻る現象もよく観測される。

必要な「嫌われ者」

プロダクトマネジメント

周囲が内向きな仕事をしている時にNoを言うのは非常にカロリーが高い。内向きな仕事というのはやっている本人からすると「チームみんなのため」というメンタルになり、それを否定する行為だからだ。特にマネジメント層が内向きになった時に、下の立場からNoを伝えるのは相応の勇気が要る。

このブログのテーマの「プロダクトマネジメント」はまさにこの状況下で顧客に向き合い続けることと同義だと思っている。プロダクトマネージャーはただの役職名だが、プロダクトマネジメントは「状況に流されずプロダクトに向かう」姿勢を意味する(と、思っている)。

積極的に嫌われていこう。顧客に愛されないプロダクトを創るチームに、価値はないのだから。

追伸

と、偉そうなことを書いていたら少し前にnaoyaさんが同じようなことを書いていた。

また、一連の「踊り場問題」はターンアラウンドのケースには本当に”よくある話”。最もわかり易い例だと三枝3部作のひとつが、「組織の自己変革の難しさ」を描いており、そのまんまである。

V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)

V字回復の経営―2年で会社を変えられますか (日経ビジネス人文庫)

なぜなら第一に、普通の人間は誰しも自主努力だけで簡単に自分を変えることは出来ない。心に大きな影響をおよぼす何らかの出来事がない限り、自分の価値観、行動パターン、好き嫌い、リスク感(安心や不安の感じ方)などを自発的に切り替え、習慣を崩し、突如として革新的行動に出ることなど容易にできない。組織も同じなのである。

昔の書評記事も良ければどうぞ。

Rebuild.fm #171

更にrebuild.fmでnaoyaさんに言及してもらい、言いたかったことをスパッと代弁してもらえた🗣 個人的にも「人から良く思われたい」という当然の欲求と戦ってプロダクトやその先の顧客に向き合いたいものだ🤔

rebuild.fm

*1:ちなみに「停滞」はKPIに現れるが、「痛み」は現れない。サービスに絶望した顧客はその足跡(log)を残すこと無くそっと去っていく。

*2:会議に「NO」、膨大なスプレッドシートに「NO」、バイアスの掛かった創り手の言葉に「NO」を言い、ただ「絶望した顧客の心理」に向き合う地道で辛い仕事をやり続ける熱狂。

2016年に読んで良かった”10冊”

2016年の「読書」について振り返る。

  • 購入した書籍は約70冊(技術書含む、漫画は含まない)
  • うち読了or途中で読むのを辞めた本が約40冊

大体月に3~4冊触れるかどうか、という量だった。

自明だが、僕は決して「読書家」ではない。子育てや仕事、ブログなどの合間を縫って読んでいるため、時間の確保がまず大変である。必然的に自分の「課題意識への答えが期待できそうな本」や「ベストセラー」を手にとりがちで、これ自体は賛否あるかなぁと思っている。ちなみにフィクション小説はこれまでほとんど読んだことがない。

最近ではスキマ時間で効率的に読書をするために、iPhoneのKindleアプリとVoiceOver機能(3倍速)を組み合わせて「耳で読む」というスタイルを確立した。これはなかなか調子がよく、2016年後半の積読消化率に大きく貢献した。

そんなスタイルで今年読んだ本のうち、「個人的に良かった10冊」を紹介したい。

第1位 : 失敗の本質

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

  • 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1991/08
  • メディア: 文庫
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書評記事を書こうとしては何度も失敗している不朽の名著。2013年来、毎年通読している。今年は経営における自身の課題意識と相まって最も刺激が多かった*1

太平洋戦争での「敗戦」を決定づけることとなった6つの盤面を取り上げ、「なぜその意思決定がなされたか」について考察された本。6つのうちの1つ、ミッドウェー海戦の項から引用するが、日本が極めて現実的な戦略を描き、丹念に国力を練り上げてきたことがわかる。

明治四〇年(一九〇七年)に制定された「帝国国防方針」と「用兵綱領」以来、日本海軍の仮想敵は、米国海軍であった。日本海軍は長年にわたって、広大な太平洋をはさんで対峙する米国海軍に対し、一定の兵力比を維持することに努力してきた。その戦略思想の中心は、短期決戦を原則とし、太平洋を越えて来攻する米国艦隊を日本近海に邀撃し、艦隊決戦により一挙に撃滅しようとするものであった。そしてこのような一貫した基本方針のもとに、約三〇年余にわたり、日本海軍は作戦研究、兵力の整備、研究開発、艦隊編成、教育訓練などを行なってきたのである。

一方で「戦略トップ」と「現場トップ」の意思疎通が曖昧なまま、適当に突っ込んでドーーーン!というケースがこのミッドウェー海戦である。

その他5つのケースを読んでも当時から日本が抱えてきた組織的な問題は何も変わっていないということがよく分かる。失敗の本質は確かに本質をあぶり出してくれるものの、その乖離を埋めるためのアクションは我々が取らなくてはいけない。我々が集中すべきは1にも2にもアクションなのだと突きつけられる一冊。

第2位 : 言ってはいけない

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

書評記事 : 『言ってはいけない - 橘玲』から読み解く育児のパラダイム・シフト - Yamotty Blog

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめなど「個人の資産戦略」で昔からお世話になっている著者が、「学術的なファクトをもとに人が声に出しづらい真実」をあえて明らかにするというコンセプトの本。僕は子育てにおける本質を教えてくれる本だったと思っている。

  • 知能のちがい(頭の良し悪し)の7~8割は遺伝で決まる。論理的推論能力の遺伝率は68%、一般知能(IQ)の遺伝率は77%
  • 精神病もほぼ遺伝で決まる。統合失調症が82%、双極性障害が83%。身体の遺伝率より遥かに高い(身長の遺伝率が66%、体重の遺伝率が74%)
  • 白人の集団の中に黒人の集団を混ぜると、黒人の集団は反白人のギャングスターとなる。白人の集団の中に一人の黒人を混ぜると、彼は白人の中でのHEROになる。同調圧力がストーリーを決める。

第3位 : ツイッター創業物語

ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り

ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り

Twitterという特異なサービスがどういう経緯で生み出されたのか、主に創業者間の関係性に着目して書かれたノンフィクション。

Twitter創業者の一人、エブのBlogger時代の話や、Twitter前身であるOdeo社の話も詳細に描かれている。スタートアップの創業ストーリーとして純粋に面白い、というのもあるが、なにより「ツイッターという世界で最も ”製作者の意図と、ユーザーの使い方が一致しない” 不思議なサービスがどうやって産まれたのかが垣間見える。

ジャック・ドーシーがFacebook CEOのマーク・ザッカーバーグへTwitterの売却について密談するシーンはドキドキした。

マークのメールがジャックの受信箱に届いた。〝T〟という胸騒ぎのする件名だった。長いメッセージでマークは、ツイッターとフェイスブックの組み合わせが、おたがいにとって合理的である理由を、要点をならべて説明していた。ふたつがいっしょになれば、世界を変えられる。人々を結びつけ、何十億ドルも稼げる。そのあと、マークは会社を買収しようとするときによく使う手を見せた。創業者たちが買収に応じないのであれば、フェイスブックは「ツイッターの方向に近づくようなプロダクトをつくりつづける」。キス付きの脅し。きみたちがフェイスブックに来れば、ぼくたちは幸せに暮らせるんだよ。それとも断れば、ぼくたちは全力をあげてきみたちを滅ぼすよ。また踏みにじられるおそれがあった。

第4位 : 論語と算盤と私

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

書評記事 : 完璧な経営は存在しない - 『論語と算盤と私』 - Yamotty Blog

今年唯一紙で購入した本。以下のメッセージが、mixi時代の朝倉さんの苦労と覚悟を一言で表しているようでとても心に突き刺さった。

動機は内から沸き立つものであるべき
職業としての経営者の世界に飛び込もうとするのであれば、その動機は内から自然と沸き立つ感情によるものであるべき 雇われ経営者が狡兎死して走狗煮らるの扱いを受けることもあるでしょう。それでも、それが経営者としての責務を全うした結果であり、肝心の会社が良くなったのであれば、まだ納得がいくのではないでしょうか。

第5位 : 確率思考の戦略論

確率思考の戦略論  USJでも実証された数学マーケティングの力

確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力

先日退任が報道されていたUSJ立て直しの請負人、森岡氏の最新作。若干鼻につく表現があるが(笑)、マーケターとして仕事に没入し、極めて高いパフォーマンスを出し続けるための「観察力」の一端が紹介されている。

USJがこの5年間、やることなすこと全弾命中でV字回復したことについて、「森岡さん、どうして当て続けることができるのですか? 秘訣を教えて下さい!」と質問される方が非常に多いですが、秘訣と言われましても、実は単純な話です。私は市場構造を精緻に理解することに情熱を燃やし、「勝てる戦いを見つけること」と「市場構造を利用する方法を考えること」に思考を集中しているのです。つまり勝てない戦を避けて、勝てる戦を選んでいるから、結果として勝つ確率が高いだけなのです。市場構造を理解する意味はまさにそれ、企業が勝つ「確率」を上げるためなのです

数字を使いこなす生粋のデータサイエンティストでありながら、最もユーザーインタビューやアンケートなどの定性評価をうまく盛り込み、USJというプロダクト全体を動かす様はプロダクトマネージャーとして学びがある。

第6位 : 僕らの仮説が世界をつくる

ぼくらの仮説が世界をつくる

ぼくらの仮説が世界をつくる

書評記事 : 編集者から学ぶプロダクト・アウト - Yamotty Blog

『宇宙兄弟』などヒット請負人でもあるコルク創業者・佐渡島さん。彼が作家と編集者という関係性のなかで、どうやってプロダクトアウトをし続けるかというチャレンジを読み取ることができる。

僕はクリエイターとしての作家へ対し、最大限のリスペクトを送る彼の姿勢が、プロダクトマネージャーとエンジニアの関係性に近くとても共感を覚えた。ポール・グレアムっぽい。

作家は、「異能の人」です。人口の1%どころではなく、0.1%か、0.01%くらいしか存在しません。一緒に仕事をしていて感じるのは、彼らは物語を作っているのではなく、頭の中にもう一つ別の世界を持っていて、そこへトリップしているのです。 だから、本という形だけだと、作家が創造したものの10%くらいしか使用していないことになります。それを、30%、40%に高めていくのが、これからの時代の編集者の役目だとぼくは考えているのです。

クリエイターの能力を最大限引き出したいものだ。

第7位 : 生産性

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

年末に駆け込んできたベストセラー。僕は2011年の東北大震災の被災以降*2、毎晩「起きたら明日には死んでいるかもしれない」という恐怖感がある。だからこそ無駄をなくしたい = 生産性を高めたいという意識が強い。この本が売れて「生産性」という概念が、定義が、日本企業・家族・隣の同僚など関わる全ての人の間で共通言語として扱われていることを強く望んでいる。

本で「生産性の向上といえばコスト削減」と思われがちなのは、商品企画やマーケティングに影響力をもたない「工場」のみでその言葉が使われ、発展してきたからでしょう。しかし後述するように、生産性を上げるためにはこういった非製造プロセスでの工夫や努力が不可欠です。 生産性を上げるには、「成果を上げる」と「投入資源量を減らす」というふたつの方法があると理解したうえで、安易に投入資源量を増やさないこと、そして、コスト削減だけでなく付加価値を上げる方法も併せて考えることが必要なのです。

また「睡眠を削って勉強する」というスタイルでやってきたところに、以下の引用はガツンときた。

成長意欲の高い人の中には、日中はめいっぱい仕事をし、家に帰ってから新しいことを勉強するために時間を投入する人もいます。私たちはそういう人を「向学心があり成長意欲が高い」と賞賛します。 たしかに目の前の仕事をこなすのに手いっぱいで、新たな勉強が何もできていない人よりはマシでしょう。しかしこれは、家に帰ったら仕事も育児もまったく手伝わない、昭和型の男性社員にしか許されない成長方法です。家では家事も育児も介護もしない、コミュニティ活動もボランティア活動もしない、趣味もない、仕事人間のための成長法なのです。 こういうスタイルしか存在しないと、育児や介護に時間をかける必要が出てきた時点で、まったく成長できなくなってしまいます。もしくは、「今は仕事もしっかりこなし、自分にも投資したい時期だから、育児休暇などとてもとれない」という男性がいつまでたっても減りません。 そうではなく、仕事の生産性を上げ、目の前の仕事だけでなく今後の成長のための投資や新しいチャレンジもすべて労働時間内でやりきれるようになる、そうなることを目指す——そういう意識に変えていかないと、プロフェッショナルとしての成長には、常に個人生活の犠牲がセットでついてきてしまいます

第8位 : 自分の中に毒を持て

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間"を捨てられるか (青春文庫)

書評記事 : 道で己に逢えば、己を殺せ - Yamotty Blog

道で己に逢えば、己を殺せ

という大好きな言葉と出会った本。その言葉の意図は以下の様なものだ。

人生を真に貫こうとすれば、必ず、条件に挑まなければならない。いのちを賭けて運命と対決するのだ。そのとき、切実にぶつかるのは己自身だ。己が最大の味方であり、また敵なのである。

情熱家の岡本太郎氏の言葉が、易きに流れようとする自分をいつも奮い立たせてくれる。僕のバイブル候補。

第9位 : トヨタの強さの秘密

関連記事 : プロダクトマネジメント最大の誤解 - Yamotty Blog

今年書いた記事の中で最も難産だった、上記の記事の種となった本。「リーンスタートアップ」「デザイン・シンキング」などの世界中のITスタートアップにおいてスタンダードとなっているメソッドのルーツはトヨタの主査精度にあるが、トヨタの本質は実は誤解されている。トヨタのプロダクト開発力の本質はなんなのか、正しく理解することに、”世界基準のプロダクト”を創るヒントが有るはずだ。

「リーン(Lean)」という英語は「ムダのない、贅肉のない」という意味だが、米国では、「トヨタ(流企業経営)」のことも意味している。  たとえば、リーン生産とは、トヨタ生産方式(TPS:Toyota Production System)のことであり、リーン開発はトヨタ流の製品開発(TPD:Toyota Product Development)における手法や考え方の総称を言っている。

第10位 : ワールドトリガー

ワールドトリガー 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

ワールドトリガー 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

唯一マンガからのエントリー。友人から勧められて読み始めた少年ジャンプ連載中のマンガ。超ざっくりいうと地球人が武器を使って宇宙人と戦争するSF王道。基礎能力やスキルが低く、特徴のない主人公が『思考の創造性』だけを武器にチームを手繰りながら勝利を手にしていく様は、「もたざる人間の生きる道」を提示してくれる。勇気が出る。

番外 : 読みかけ・積読中

年末年始にかけて読み切りたいと思っているリスト。

イーロン・マスク 未来を創る男

イーロン・マスク 未来を創る男

天才 (幻冬舎単行本)

天才 (幻冬舎単行本)

わが友 本田宗一郎 (GOMA BOOKS新書)

わが友 本田宗一郎 (GOMA BOOKS新書)

総理 (幻冬舎単行本)

総理 (幻冬舎単行本)

さいごに

2016年は『書籍嫌い・苦手』の自分にしては比較的多くの本と触れた一年だった。毎日少しずつ読むというより、テンションが高まった時に一挙に読み切るスタイルが本当は好きなのだが、どうしても細々とした時間しか確保できないことが多いので自分に残るものが少ないと感じることがある。回避策としてはちゃんとブログに残しておくことかと思うので書評ブログの投稿数を2017年はKPIにしてみよう。

*1:ちなみに読者の一人である野中郁次郎先生は、モダンなソフトウェア開発手法とされる「アジャイル(スクラム)」の生みの親でもある。

*2:当時は宮城在住

大切なものは ほしいものより先に来た

※ この記事は「Qiita ポエム Advent Calendar 2016」13日目の記事です。
※ ポエムです。
※ ポエムです。

俺が狂ったのは奴らのせいさ

般若というラッパーがいる。

現在ラップは日本史上で何度目かの市民権を得るチャンスの中にある。般若はその中心にいる。

2012年以来、高校生ラップ選手権、フリースタイルダンジョンといったテレビ番組をきっかけに、MCバトルという文化*1が大流行している。そして2016年現在、MCバトルは若手のラッパーがバイト暮らしから「ラップで食っていく」ための最高のステップになっている。そういった若手のラッパーにとっての現代のカリスマが般若である。

他方で、その般若もまた、彼がラップを始めるきっかけを創った90年代のカリスマラッパー達への敬意を歌っている。

ギドラ ブッダ 雷 ペイジャー俺が狂ったのは奴らのせいさ*2
― 般若『最ッ低のMC』

若き10代の般若は”山頂”と出会い、目指し、そして現在では圧倒的にオリジナルな存在になった。そんな今でも彼は日本語ラップという”言葉遊び”を日本で一番楽しんでいるようにみえる。即興でラップをし、楽曲を創り、自身のレーベルを立ち上げ、仲間や後輩をプロデュースし、ブログを書いている*3

「ギドラ」「ブッダ」「雷」「ペイジャー」という”山”に狂った彼は、未だその山を登り続けているのだ

名声や金を得て「アがったアーティスト」は数多くいるが、彼はそういった存在とは一線を画する。未だ「ラップ道」という道中を一番楽しんでいるのは般若だと思う。

Google が見つけた”登りきれない山頂”

Google (Alphabet)は過去20年で最も成功した企業の一つに数えることができるだろう。Googleは自身の使命を極めてシンプルに定義している。

世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること

僕は一年半ほど、Google の中で仕事をしていたことがある。

そこで最も驚いたのは上記のミッションステートメントの浸透度だ。PRやプロジェクトマネージャーならまだしろ、「フロアに普通にいる社員」がミーティングでこのメッセージを(それも何人も、何度も)口にしたとき、Google の真の強さに触れた気がした。

しかしそんなGoogle ほどの革新的で、スピードがあり、イノベーティブな組織でも自らが掲げた使命を達成することはできていない、というのはもっと注目すべき事実ではないだろうか。もしかしたら今ではFacebookのほうがGoogle の使命に対してより近いところにいる可能性もある*4

この事実を僕はこう読み取っている。『Google はあえて”達成できない使命”を設定している』のだと。

大切なものは ほしいものより先に来た

このブログを読んだことのある方であれば、僕がHUNTER x HUNTERというマンガのファンであることは知っているかもしれない(参考 : 父のジレンマ - Yamotty Blog)。

この単行本の32巻に以下のようなシーンが有る。主人公のハンターであるゴンが、父親でもあり伝説のハンターでもあるジンへ対し「今ハントしたいものは何か?」と尋ねるシーンだ。

HUNTER×HUNTER モノクロ版 32 (ジャンプコミックスDIGITAL)

HUNTER×HUNTER モノクロ版 32 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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ジンが狙う獲物はいつも人々の想像のスケールを遥かに超える。そんな遥か「山頂」を目指す道すがらで、ジンは「仲間」や「シェア」といった山頂以上に大切な存在に出会ったと息子ゴンへ説く。

「大切なものは ほしいものより先に来た」

このメッセージはあらゆる山頂を目指す全ての人を勇気づける名言だ。

遙か先を目指すからこそ、プロセスから大切なものが得られる。その事実を「知って」いるからこそ、何度も高い山頂へアタックし続けるモチベーションとなる。

  • 日本の僻地からアメリカンフットボールの最高峰・NFLを目指し、あと一歩まで到達した部活の先輩
  • 『旅をしながら暮らしたい』と一言だけ残して、本当に就職せず世界中を放浪しながら暮らしている同級生
  • 史上最高齢でエベレストを登頂した高校の先輩

これまでに僕を魅了してきた人々。そういえば彼らはみんなジンと同じことを体現しているような気がする。

※ちなみにこの名言は1998年の連載開始から18年が経過するも、「10数ヶ月休載しては年約10週だけ連載再開する」というルーティンによって一向にストーリーが進まないHUNTER x HUNTERの著者、富樫氏を自己正当化する高度なメタファーとも読み取れる。彼自身がこの漫画にあまりに高度な山頂 = 結末を設定してしまったために、全力で寄り道を楽しんでいる最中なのだ。

完成しないプロダクト

般若、Google 、ジン。三者三様の山頂を目指している。そして彼らはその道中を楽しんでいる。

そして僕が今登っている山を平たく言うとこんな感じになる。

「プロダクトを通じて世の中を豊かにする」

僕と同じように、種類を問わずプロダクトを創っている個人ディベロッパーや組織は国内だけでも数十万と存在する。一方で世の中を豊かにする、というインパクトを残せるのは5年に1つといったところだ。このことからもこの山の山頂は極めて高いものだと思っている。

また プロダクトマネージャーのキャリアはいかにして始まるか - Yamotty Blog にも記した通り、少し前の僕はエンジニアリングのことも、デザインのことも、ユーザーのことも、プロダクトの作り方も知らない、そんな状態だった。

それでもプロダクトに向き合い、小山を乗り越えたり藪にハマったりするうちに、ジンと同じように「手助けしてくれる奴」や「たまたま行き先が同じで道中を一緒に楽しんでくれる奴」が現れるようになった。すごい小さいことだが、Twitterで彼らと日常をupdateすることも、プロダクトに狂い続けられるモチベーションの一つだと最近になって気づいた。

道中を楽しもう

Google の例が示すとおり、実はプロダクトという存在は「完成することがない」。理想と現実の間は埋まることがないのだ。プロダクトを創るというのはそのギャップの間を走り続けることであり、膨大なコミットとそれなりの覚悟と、時間を要する。ビジョンを満足する結果なんて簡単にはでない。

プロダクトマネージャーの数だけ、その横に孤独や葛藤との戦いがあると思っている。なにより僕自身がそうだ。そういったプロダクトマネージャーこそ、道中を楽しんでほしい。

「暮らす人と旅しよう」と掲げ、今や時価総額3兆円にも達すると噂されるAirbnbですら、創業時の2008年には泣かず飛ばずのプロダクトだったという。それでも彼らは山頂の高さと、道中を一緒に楽しめるメンバーに引っ張られて、ここまで歩みを進めてきた。まさに「旅」の概念を変えようとしつつある*5

プロダクトマネージメントは一種の旅である。”踊る阿呆に踊らぬ阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損”。どうせならめいいっぱい道中を楽しもう。

道草を楽しめ 大いにな
- ジン

*1:ラッパーがビートに乗せて即興で言葉を吐き相手をDisる。即興の中で韻を踏んだり、ビートにハマるフロウ(音程)を表現することでグルーヴを創る。ラップの代表的な文化の一つ。

*2:それぞれ90年代に活躍したキングギドラ、BUDDHA BRAND、雷、MICROPHONE PAGERというHipHopグループ

*3:昭和レコードというレーベルを経営し、即興podcastへはボイスブログを過去数年来投稿し続けている

*4:ちなみにFacebookの使命は「世界をよりオープンでより結び付けられた場所にする」こと

*5:Airbnbは僕も大好きなプロダクトでもある→プロダクトマネージャーがAirbnb(エアビーエンビー)で家族旅行をプランニングするなら - Yamotty Blog

ホワイトクリスマスのために東京都民はどこへ行けばよいか - BigQueryに訊く

BigQueryにはGoogle が用意した一般公開のデータセットが置かれており、クエリを叩くことで自由に分析をすることが可能だ。1TBのサインアップボーナスで練習したり遊ぶにはもってこいの教材である。

f:id:yamo3:20161127232358p:plain

そこで今回は過去の気象統計データ『GSOD』から、ホワイトクリスマスを過ごすため、東京都民は12/24にどこへ行けばよいかというイシューついて調べてみようと思う。

0 / 準備 - 気象統計データを使う

  • BigQuery内の一般公開データセットの中に、NOAA Global Surface Summary of the Day Weatherというデータセットがある。
  • 詳しくはBigQueryのdocumentを参照。National Oceanic and Atmospheric Administrationが提供している気象データをGoogle がBigQueryで利用できるようにぶち込んでくれたものですね。

この公開データセットは米国海洋大気庁(NOAA)によって作成されたもので、空軍戦闘気候学センターから取得された全世界のデータを含んでいます。このデータセットは 1929~2016 年の間に 9,000 か所以上の観測地点から収集された GSOD データを網羅しています。

  • このデータセットの構成はgsod2015のような、その年の全観測地点における気象データが入ったテーブルと、stationという観測地点の基本データが入ったマスターテーブルの2種類がある。

それでは早速見ていこう。

1 / 日本国内に観測地点はいくつあるか?

  • まず今回の対象となる日本国内の観測地点について調べる。
  • 市区町村の数と、観測地点の数をカウントする。
SELECT
  country,
  EXACT_COUNT_DISTINCT(name) as CntState,
  COUNT(name) as CntUsaf
FROM
  [bigquery-public-data:noaa_gsod.stations] b
WHERE country = "JA"
  GROUP BY
  1

結果 : 364のエリアに428の観測地点🤔

f:id:yamo3:20161127141947p:plain

この364のエリアに対して、『12/24にはどこへ向かえば雪が降って着やすいのか?』よいかを算出することになる。

補足 : 東京都の観測地点は何個あるか?

  • 緯度(latitude)・経度(longitude)を区切ると都道府県周辺の観測地点数を割り出すことができる。
  • 東京都の経緯度はここで調べられる。ただし東京都は国土の南に幾つかの離島を持ち、それらが緯度と経度を南西に大きく押し下げている。
  • そこで擬似的に経度の範囲を奥多摩町役場(139.0547)から葛飾区役所(139.5050)まで、緯度の範囲を埼玉県草加市(35.8106)から神奈川県川崎市役所(35.3151)までとする。
SELECT
  country,
  EXACT_COUNT_DISTINCT(name) AS CntState,
  COUNT (name) Cnt
FROM
  [bigquery-public-data:noaa_gsod.stations] b
WHERE
  country = "JA" AND lat BETWEEN 35.3151
  AND 35.8106
  AND lon BETWEEN 139.0547
  AND 139.5050
GROUP BY
  1

結果 : 8のエリアに10箇所の観測地点🤔

f:id:yamo3:20161127142050p:plain

本土の東京都(近郊)には観測地点が意外と少ない。

2 / 12月24日に降雪した日にちが最も多い観測地点はどこか

  • 日本の全観測地点を対象に12/24の、降雪日/全観測日(便宜のため降雪率と呼ぶ)を算出する。データの重みを考慮するため、観測年数も付ける。
    • 降雪日の算出にはbigquery-public-data:noaa_gsodの中にあるsnow_ice_pelletsを利用。
SELECT
  b.name,
  ROUND(COUNT(CASE WHEN a.snow_ice_pellets ="1" THEN a.year END)/COUNT(a.year),3) as rate,
  ROUND(COUNT(a.year)/EXACT_COUNT_DISTINCT(a.stn),0) as sumpleYears,
  FROM (
  SELECT
    stn,
    wban,
    year,
    snow_ice_pellets
  FROM
    TABLE_QUERY([bigquery-public-data:noaa_gsod], 'table_id CONTAINS "gsod"')
  WHERE
    mo = "12"
    AND da = "24") a
JOIN (
  SELECT
    usaf,
    wban,
    name,
  FROM
    [bigquery-public-data:noaa_gsod.stations]
  WHERE
    country = "JA") b
ON
  a.stn=b.usaf
  AND a.wban=b.wban
GROUP BY
  1
ORDER BY
  2 DESC

結果 : 上位は北海道・東北エリア(当然)🤔

  • 以下は結果のうち降雪率TOP30をリスティングしたもの。当然の結果に笑
観測地点名 降雪率 観測年数
OMINATO 100% 1
RUMOI 92.7% 55
WAKKANAI 90.2% 46
ASAHIKAWA 88.5% 43
KITAMIESASHI 88.2% 34
KUTCHAN 88% 25
SUTTSU 87.3% 55
OMU 86.1% 36
RISHIRI 84.2% 19
SAPPORO 83% 53
CHITOSE 82.1% 28
HABORO 80.6% 36
NEW CHITOSE 79.2% 53
AOMORI 76.9% 39
IWAMIZAWA 75.7% 37
OMINATO (JASDF) 75.6% 41
MISAWA AB 73.4% 64
ABASHIRI 72.7% 55
MOMBETSU 72% 25
REBUN ISLAND 71.4% 7
OTARU 70.3% 37
FUKAURA 69% 42
MORIOKA 68.9% 61
AKITA 68.4% 49
HAKODATE 67% 53
NEMURO 65.5% 55
ESASHI 64.8% 54
MURORAN/YAKUMO 63.6% 55
MEMANBETSU 62.8% 43
OKUSHIRI 60.9% 23

3 / 東京エリアの降雪率は?

補足で使用した経緯度のフィルタを使い、東京エリアの降雪率を算出する。

SELECT
  b.name,
  ROUND(COUNT(CASE WHEN a.snow_ice_pellets ="1" THEN a.year END)/COUNT(a.year),3) as rate,
  ROUND(COUNT(a.year)/EXACT_COUNT_DISTINCT(a.stn),0) as sumpleYears,
  FROM (
  SELECT
    stn,
    wban,
    year,
    snow_ice_pellets
  FROM
    TABLE_QUERY([bigquery-public-data:noaa_gsod], 'table_id CONTAINS "gsod"')
  WHERE
    mo = "12"
    AND da = "24") a
JOIN (
  SELECT
    usaf,
    wban,
    name,
  FROM
    [bigquery-public-data:noaa_gsod.stations]
  WHERE
    country = "JA" AND lat BETWEEN 35.3151
  AND 35.8106
  AND lon BETWEEN 139.0547
  AND 139.5050) b
ON
  a.stn=b.usaf
  AND a.wban=b.wban
GROUP BY
  1
ORDER BY
  2 DESC

結果 : 東京でのホワイトクリスマス率は3%🤔

東京圏でホワイトクリスマスを迎えられる可能性は3%...。衝撃的な結果。都市数が8→6へ減っているのはブランクのデータセットがちょいちょい紛れているからか。ホワイトクリスマスのためには東京脱出が必須

観測地点名 降雪率 観測年数
TACHIKAWA (JASDF) 3.1% 65
YOKOTA AB 2.9% 68
KASTNER AAF 0% 16
ATSUGI NAS 0% 52
ATSUGI US NAVAL AIR STATION 0% 11
FUSSA 0% 19

4 / 東京から50km圏内、どこへ向かえばよいか?

最後に東京から50kmへ拡張した際に、最も降雪率の高いエリアを割り出す。経緯度をいじることでザックリと算出する。 この記事によると、

日本における 1km あたりの緯度は、だいたい0.0090133729745762 度
日本における 1km あたりの経度は、だいたい0.010966404715491394 度

とのこと。そのため緯度経度を上下左右0.5( ≒ 0.01 ✕ 50 km)ずつ拡張し、以下の範囲で算出してみる。

  • 緯度 : 34.8151 ~ 36.3106
  • 経度 : 138.5547 ~ 140.0050
SELECT
  b.name,
  ROUND(COUNT(CASE WHEN a.snow_ice_pellets ="1" THEN a.year END)/COUNT(a.year),3) as rate,
  ROUND(COUNT(a.year)/EXACT_COUNT_DISTINCT(a.stn),0) as sumpleYears,
  FROM (
  SELECT
    stn,
    wban,
    year,
    snow_ice_pellets
  FROM
    TABLE_QUERY([bigquery-public-data:noaa_gsod], 'table_id CONTAINS "gsod"')
  WHERE
    mo = "12"
    AND da = "24") a
JOIN (
  SELECT
    usaf,
    wban,
    name,
  FROM
    [bigquery-public-data:noaa_gsod.stations]
  WHERE
    country = "JA" AND lat BETWEEN 34.8151
  AND 36.3106
  AND lon BETWEEN 138.5547
  AND 140.0050) b
ON
  a.stn=b.usaf
  AND a.wban=b.wban
GROUP BY
  1
ORDER BY
  2 DESC

結果 : クリスマスは富士山へ😇😇😇

  • 統計的には14%の確率でホワイトクリスマスとなっております。12/24は富士山へGO!!💨💨
    • 注 : 閉鎖期間中なので登山不可の見込み
  • 真面目な結果としては「横須賀市」「河口湖」あたりが統計的には東京都内より2倍ほどホワイトクリスマス率が高い。このあたりを狙ってみるのは良いのではないか。
観測地点名 降雪率 観測年数
FUJISAN 14% 43
FUJI (JASDF) 13.3% 30
YOKOSUKA NAVAL STATION 6.9% 29
KAWAGUCHIKO 5.6% 36
TACHIKAWA (JASDF) 3.1% 65
YOKOTA AB 2.9% 68
CHICHIBU 2.7% 37
TATEYAMA 2.3% 43
TOKYO INTL 1.6% 63
IRUMA 1.4% 35

まとめ

  • 東京都民が手軽にホワイトクリスマスを狙おうと思った場合、富士山へ急行するか、横須賀へ向かえという結論となった。
  • なお私の実家のある青森では過去39年間で76.9%のホワイトクリスマスという驚異的な結果を叩き出しており、正直個人的にホワイトクリスマスなんて当たり前だったというドヤを記しておこう。
  • 青森は新幹線で3.5時間で着くし、温泉も食べ物も豊富。12/24、都民は富士山より青森へ行こう🚅💨(PR)

なぜ文章を書くのか

「下手の横好き」とはよく言ったもので、僕は日々文章を書き続けている。筆を取らない日(正確にはキーボードだが)はない。時にはブログを、時には仕事のドキュメントを、時にはTwitterに誰の役にたつのかわからないような散文を書き綴っている。毎日だから、中毒患者だ。そしてこの症状は2010年にスマホを手にしたときから悪化の一途を辿っている。

スマートフォンは真の意味での”パーソナルコンピューター”だ。一人が一台、もしくはそれ以上の台数を保有し、LINEやWeChat、Messengerなどのコミュニケーションアプリ、はたまたFacebookやTwitter、SnapchatなどのSNSを通じて他者と自分を媒介してくれる。

Snapchatは非言語コミュニケーションの波を加速させた革新的なプロダクトの一つであるが、それによって文章を通じたコミュニケーションが廃れることはなく、多くの人は量の多寡はあれ、毎日文章を生産する。

僕も文章を書く。あなたも書く。

しかし、なぜ文章を書くのか。考えたことはあるだろうか。「書く」という行為を通じて、そして「文章」という生産物を通じて、僕は何を得ているのか。少しだけ、考えてみた。

1 / 書くことは、自分との対話である

インターネットは公(おおやけ)のものだ。公に対し文章を作成し、公開するからには、その文章には目的があり、読み手の誰かの心を動かし行動へつなぐ意図を持っているはずだ。

…と僕も考えていた。

しかしTwitterやSlackとの出会いは、「すべての文章がそんな肩肘はらなくても良いじゃない」という免罪符を与えてくれた。「書く」事自体を通じて自分と対話し、思考する。「書く」事自体を目的として良い、と言われたような心地。

Twitterの特異性。Twitterには思考のフローが垂れ流れている。99%は推敲されない。生々しい思考の跡。自分のツイートを見返して恥ずかしくなったことはないか?それは服を着せる前の裸の言葉だからだ。

ツイートに書き殴られている言葉は自分との対話の議事録ドラフトだ。ブログはTwitterと比べると、思考が服を着ている。ブログは既に「人に自分がどう見られるか」という顧客目線を備えている。本はもはや正装といってもいいだろう。蝶ネクタイにタキシードだ

「裸の言葉」を使って僕は自分と対話を楽しんでいる。「書く」という行為を”使って”、自分と情報交換をしているのだ。人間は六感をフル活用して自分の体内に情報を取り込み、脳という精密機械にためていく。その量は極めて多く、その殆どは取り出すことすら忘れ去られ、使われない。そんな自分が持つビッグデータから何かを引き出したい時、僕は「書く」のだ。

Twitterは多くの人に「裸の言葉を紡いで良い」という市民権を与え、かつそれがしやすいように配慮してくれたステージだ。自分との対話を楽しみたい時、Twitterをおもむろに開く事が多い。同じ体験をしたことがある人は、多いのではないだろうか。

2 / 文章は、アート(自己表現)である

「書く」ことは僕が今できる最大限の自己表現だ。青春時代に死ぬほど聞いたDragon Ashというバンドのフロントマン、KJも最近のインタビューでこんなことを言っていた。

(第三者に自分の思っていることを提示する方法について)俺の場合は、作詞だったり音楽だったりする。よく言っているのが、音楽家じゃない人がブログを書くような感覚で俺は曲を書いているのかもしれない。こういうことがあったなと感じたことを閉じ込めるために曲にしてみたり、想いを忘れないために曲にしてみたりって感じかな。

japan.cnet.com

ブログや仕事のドキュメントを書く時、そこには「私はこういう人間です、理解して下さい」という気持ちを込めて執筆する。僕にとって、「作品」としての文章は、音楽家にとっての音楽であり、画家にとっての絵である。時にはタキシードを着せたいときもあるが、多くは即興に毛が生えたような文章を書く。あまり派手な服を着せると、かえって「自分」が伝わらない気がして。

シンプルで、短く、誰にでも誤解がなく伝わる。そして男らしく言い切る。批判を恐れない。

僕はそういう文章が好きだが、それ以上にそういう「生き方」が好きなんだろう。僕の文章 = アートには深みがないけど、思慮深さと無縁の人生を歩んできた自分らしく、どうせならとびきりわかりやすく表現したい。そう思って書く。

僕の私生活を知っている人ならわかるかもしれないが、僕は大体無地かワンポイントのシンプルなTシャツを着ている。何も考えずに買う服、買う服がそうなってしまうのは、あまり飾らず、わかりやすく、断定的でありたいという人間性からくる。そういう意味ではファッションも、文章も同じだ。

「何かを伝えたい」という衝動は誰にでもある原始的なもので、アートの本質だ。パッと見のシンプルさ、わかりやすさが僕の持つベクトルなのだろう。

3 / 文章は、自分を隠してくれる

わかりやすく、断定的な人間のくせに、すこし臆病でビビっていて、それでいて恥ずかしがってもいる。そういうところが僕にはある。よく恐れ知らずの人間であるかのように誤解を受けるがそれは過ちだ。僕はほどほどにビビリで、恐怖を乗り越えることが日常。だから慣れているだけだ。

そういう質(タチ)だから「断定して、批判を恐れない(ドヤ」とか言っておきながら批判を怖がっている自分がいる。また文章を公開した瞬間はかなり恥ずかしかったりもする。けれど、批判は見えない論点をあぶり出してくれるから、逃げないようしたい。…とは口ばかりで、面と向かって言われるのはやっぱり好きになれない。そういう時、僕は文章を使う。

文章は、他人から自分を隠し、「僕の主張」だけをきれいに届けてくれる。僕が辛かったり、ビビってたり、恥ずかしくて顔が赤かったり、ハイだったり、喜んでいたりしても関係がない。僕を知っている人にも、知らない人にも、文章として吐き出された言葉は、そのまま相手に喰われていく。時に、何万という人に。

少しビビリで恥ずかしがり屋な僕が、言葉に隠れて多くの人に何かを「伝える」事ができる。それが文章なのだ。

さいごに

日々文章を通じて言葉を紡いでいると、「言葉」と「言霊」の違いは何か、など考えることがある。例えばWikipedeaによると言霊とは以下のようなものらしい。

声に出した言葉が、現実の事象に対して何らかの影響を与えると信じられ、良い言葉を発すると良い事が起こり、不吉な言葉を発すると凶事が起こるとされた。そのため、祝詞を奏上する時には絶対に誤読がないように注意された。

口に出したことは現実化するという現象だが、僕はこう解釈している。

「思考」とは言葉で行われる。人間が他の生命と比較して突出した思考能力を持っているのは、「言葉」というツールを開発したからなのだ。言葉が重厚な思考を可能にした。

人間の行動の多くは思考を経由して行われる。つまり「声に出した言葉が、現実の事象に対して何らかの影響を与える」というのは必ずしもスピリチュアルなものではなく、一定の合理性がある。


文章とは後世まで残る。その場でしか消費できない会話と違い、「未来の言霊」になるかもしれない。僕は未来の誰かにとっての「言霊」となってほしいと筆を執る。その誰かは見知らぬ人かもしれないし、自分の息子かもしれない。それが楽しみで、文章を書く。

(ポエムにお付き合い頂きありがとうございました)

完璧な経営は存在しない - 『論語と算盤と私』

Kindle版がないため久しぶりに紙の本を買い、蛍光ペンを片手に一晩で通読した『論語と算盤と私』。朝倉さんの肉声を聴いたような心地だ(ちなみにNPO時代にマッキンゼーの同僚だったという理由で当時のNPO代表と朝倉さんのトークセッションを開催したことがあり、そのときの声で再生)。

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

  • 経営者のリーダーシップ
  • 成熟企業のターンアラウンド
  • スタートアップの環境
  • ファイナンス・マーケット
  • キャリア観

などの大きなテーマに対し、『赤の女王の走り方』やNewspicksでの連載をグルーピングして再整理した構成の本。 朝倉さんはマッキンゼーからスタートアップ創業、mixi売却、mixiでのCEO就任・見事なターンアラウンド...etcと出色のキャリアを持ちながら、極めて「地に足の着いた」経営論を展開する。会社や事業の舵取りに悩んだ際にはよくブログを読み漁っていた僕としては、この本を手に取らない理由はなかった。

自分に刺さった抜粋を幾つか紹介しよう。

経営者のタイプと「起業家」のジレンマ

人には得手不得手ががあり、それは経営者にとっても同じ。スタートアップであれば、何もないところに旗を立て、ヒト・モノ・カネを集めながら事業を形にしていくわけだが、その過程で創業メンバーがボトルネックとなり成長が滞る例は後を絶たない(というか正直、僕自身がボトルネックになるケースも多々あった)。

創業期「起業家」 、成長期「事業家」 、成熟期「経営者(狭義)」
同じ経営者という呼称であっても、先発登板するのと、途中から救援リリーフすることでは、全く異なるアートです。

例えばGoogleにおけるエリック・シュミット氏、日本であればGunosyにおける木村氏のような、フェーズに応じて適切なタイプの経営者をトップに据えるというのは、他ならぬ創業者の責任かも知れない。この創業者とCEOという役職の間に横たわるジレンマは 起業家はどこで選択を誤るのか――スタートアップが必ず陥る9つのジレンマ においても度々言及されている。

「会社は経営者の器以上に大きくなることはない」という常套句がありますが、創業者個人の成長の限界を、会社の失速につなげてはいけません。

会社が置かれた状況とその人物のパーソナリティの掛け算によって方向性を模索していくべき

停滞期を担う経営者

(停滞期には)斬新な奇策以上に、当たり前のことを当たり前にやりきることこそが、衰退局面の企業においてはより重要なはずです。ベストエフォートを尽くし切った末に結果がついてくるかどうかは誰もわかりませんが、やること自体は存外シンプルです。

直近で言うとGoogleから米Yahoo! CEOへと転身したマリッサ・メイヤーがまさにこの期待をうけてリリーフした。

就任後は「People, Product, Traffic, and Revenue」という極めて全うでシンプルな優先順位をかかげ、ベストエフォートを尽くした。しかし結果は...。ここにターンアラウンドの難しさが見える。

動機は内から沸き立つものであるべき
職業としての経営者の世界に飛び込もうとするのであれば、その動機は内から自然と沸き立つ感情によるものであるべき
雇われ経営者が狡兎死して走狗煮らるの扱いを受けることもあるでしょう。それでも、それが経営者としての責務を全うした結果であり、肝心の会社が良くなったのであれば、まだ納得がいくのではないでしょうか。

特にリリーフ経営ほど自分の気持ちを創り、会社へ注いでいくことの難しさがある。創業者が事業や会社へ思いが強いのは当たり前だ。

だからこそリリーフをする場合には強い動機を自ら作り出す必要がある。その上でやるだけやったらあとは割り切るしかないんだろう。

意思決定のためのコンディションづくり

現実の世界では情報が十分にそろったなかで決断を下すことができる状況というのは、まず持ってありえないことです。また、情報が十分にそろえば機械的に答えを導き出すことができるのかといえば、そんなこともありません。 「自分は考え抜いた末、こちらの道を選んだ。この時点で考えられうる決断をしたのだ。何が起きようと、その結果を自分は背負う」

意思決定。僕も最後は直感だと思う。直感の速度と確度が一番高い。決定にまつわるあれこれを考えてもいい意思決定はできない。

そして振り返るといい意思決定をできるかどうかは「自分のコンディション」による。良い意思決定をできるコンディションを保つことが最大の責務なのだ。

この点についてはグローバル経営を語る id:nori76さんの記事のでも強く言及されている。

コンディションが悪化すると「意思決定」の質が落ちる、ということを彼等がよく理解していることにある。グローバル経営においては、マネジメントすなわち意思決定する人、というのが明確に役割定義されていて、彼等の評価はその意思決定の質と成果によるところが大きい

上記はまっとうな真実である一方、「起業家」には自らもプレイヤーとして状況を打破する力が求められるし、十分にコンディションを整えられない期間は必ずある。

こういったジレンマは仕方ないにしろ、ある程度想定しておくことでよりボラティリティを抑えた意思決定ができるかもしれない。

理想のミッションとは

結論から書くと、理想のミッションとは

  1. 事業と疎結合であり、拡大解釈ができるグレー余白がある
  2. 自社の活動の幅を限定しないフレーズで構成されている

この2つを満たすことではないか。

ミッションとは集団を同じ方向に駆り立てるために用意するものであり、所属するものの気持ちを燃え立たせるキラーフレーズであるべきだと述べました。ところがこうした特性は、ともすれば諸刃の剣になりかねません。
仮に事業内容と高度に密結合したミッションを、継続を志向する企業が掲げたとしましょう。既存事業が成熟期に入った際、事業に紐付いたミッションの求心力が強ければ強いほど、新たな事業への転身が難しくなります。事業にはそれぞれの寿命があることを考えると、こうした求心力は組織の永続性に対する妨げにもなりかねない

感情がしがらみを創る

組織が進むべき方向に齟齬をきたすことがあります。経済的な合理性と同等以上に、組織を支配する空気が優先される様になると、企業はさながら合理性と空気のダブルスタンダードの中での活動を強いられるようになります。こうした状態がさらに進展し、組織に漂う空気がより影響力を持ち出すと、はたから見ればツッコミどころに溢れた、あまりにもナンセンスな意思決定が、大真面目にされるようになるのです。こうした「空気」は一体どこから生じるのでしょうか。山本七平の言を借りるならば、それは「感情移入」です。「感情移入を絶対化して、それを感情移入だと考えない状態」からこそ「空気」は生じるのでしょう。

ビクッとする抜粋だ。

たとえ人数数名のチームでも、感情移入が空気を作り、空気が意思決定を乱す瞬間は多々ある。そしてそれは空気の読み合いをうまくやりはじめる大人のチームでこそよく見られる。と思っている。僕は「空気はあえて読まない」というスタンスを貫き続けたい。

完成を防げ

あるステージで完成させてしまうと、変化が難しくなる。それは事業のオペレーションしかり、企業の文化しかり。完成とは仕組み化という言葉で置き換えても良いかもしれない。

多少のストレスを飲み込みながらも「変化しやすい状態」を保つことこそ、成長の遡上づくりには必要なのかもしれない。未熟は伸びしろだ。

現代の企業組織には、この「逆さ柱」の思想が求められているのではないでしょうか?すなわち、「変革」という御託が取り沙汰される以前から、状態的に組織を揺り動かし「完成」を防ぐことです。

さいごに

上記の他にも、

  • 新規事業では既存事業とのシナジーなど無視しろ、カニバリ上等
  • 文化文化というがそんなに文化が大事か?もう一度考えよう
  • バイアウト狙いのスタートアップ?全然OK

といった(もちろん、よりきれいな言葉で書かれているが)、日本のスタートアップ村ではある種NGとされている主張を自身の言葉で語られている。なんといっても「等身大」がこの本、そして朝倉さんの魅力だろう。

朝倉さんがmixi CEOに就任し、誰もが知るターンアラウンドを成し遂げたのは30歳の時。折しも来年同じ年齢に差し掛かる身としてはこの一年でどれだけ自分をステージアップできるか、チャレンジへと見をつまされる思いを得ました。

プロダクトマーケットフィット(PMF)とはどんな状態か?

市場の要求を満たしたプロダクトの状態を表す言葉として『プロダクトマーケットフィット(PMF)』というものがある。これはシリコンバレーで著名なVCであるMarc Andreessenが考案(以下)したと言われている。

Product/market fit means being in a good market with a product that can satisfy that market.


このプロダクトマーケットフィットとは具体的にどんな状態を指すのか、今回はプロダクト開発者という目線で考察してみよう。

プロダクトマーケットフィットは理想状態

まず重要な前提として、プロダクトマーケットフィットは理想状態、すなわち現実には存在し得ない状態を指す言葉だ。市場というのは無数の参加者が形成するバーチャルな取引所。無数、という言葉から分かる通り、参加者全員の要求が完全に一致することはありえず、市場の要求を100%満たすプロダクトマーケットフィットという状態はあくまで理想状態だ。

市場からの要求は理論的にはプロダクトが存在する限り自然増する。プロダクト開発者はできるだけ要求を満たし、プロダクトマーケットフィットへ近づくための「不断の努力」が求められる。

Github issues = 0の状態

プログラミング言語を使用したソフトウェア開発の現場ではGitという履歴の管理システムや、Gitを拡張し、プロダクト開発を加速させる機能を補完したGithubというツールが広く使われている。

このGithubにあるissuesという機能を利用して、プロダクトマネージャーは市場や顧客、そしてチーム内からの要求を具体的な開発項目へと文章化し、プログラマーとのコミュニケーションを行う。

ちなみにGithubは先日、このissuesをトヨタ生産方式の代表格である「カンバン」によって管理できるGithub projectsという機能を発表した(詳細についてはこの記事(Qiita)を参照してみてほしい)。

プロダクトマーケットフィットという状態は、プロダクトが市場からの要求に応えきった状態であるから、開発ニーズのあるissuesが0の状態とも言えるのではないだろうか。

小売店の売上と利益と在庫

Github issuesの例えを「小売店の売上と利益と在庫」のメタファーで捉えなおしてみたい。

一般的に小売店にとって最も重要な指標の一つは売上であり、もう一つは利益である。これら最大化するための商品の仕入れ戦略というのは非常に奥深い。

  • 在庫が少なく、品切れをおこすと「売り逃し」という機会損失をおこし、売上を取り逃してしまう
  • 「売り逃し」を十分に避けられる在庫を積むと、余剰在庫がコストとなり、利益を圧迫する

というジレンマがあるからだ。そこで多くな小売店が取るオーソドックスな戦略は、

  • 在庫を0にせずにあえて余るように持つ
  • ただし売上に対する余剰在庫比率を適切に抑える*1

ことで売上と利益をコントロールすることだ*2

本来、小売店にとっては『一切の余剰在庫が出ずに、さらに売り逃しも起きないジャストな数量の在庫を持つ』ことが市場の要求にフィットした状態ではある。

しかしながら、現実的に不可能であるため「あえて余剰を創り、余剰をコントロールする」というのが最もスマートな戦略となるのだ。

適切な在庫 = issue をコントロールできる状態

この小売店の例からプロダクトマーケットフィットの実践的な姿が見えてくる。

僕は実際のプロダクトマーケットフィットとは『Github上のissueが十分な速度で消化され続けつつも、消化量の10~20%程度が常に余剰している状態』だと考えている。すなわち、

  • 確かな開発力で市場ニーズを解き続けつつも、
  • 常に検証待ちの仮説がストックしてある状態

である。

いくつかのプロダクト開発の現場に関わってきたが、実際に上記のような状態にある開発現場では、『励起状態(元気)』であることも多い、

チームが真っ直ぐにプロダクト、そして顧客に向き合っている状態だからこそissuesは消化されつつも、「あれもこれも検証したい」というような仮説ジャンキーな状態。そしてチームがその状態を楽しんでいる。

プロダクトマーケットフィットをKPIで測るのは難しい。しかし、その理想状態へ向かうチームの状態こそが物差しになるかもしれない。

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*1:もちろん商材毎・業態毎に適切な比率は異なるはず

*2:当たり前だが実践は極めて難しい

電通鬼十則をオマージュした『プロダクト鬼十則』

目次

1 / 三枝 匡氏が説くプロダクトのサイクル

『創って(開発)、作って(生産)、売る』*1

という三枝サイクルをご存知だろうか。有名な経営ケーススタディである『V字回復の経営』で繰り返し説かれるグロースサイクルである(ちなみに本Blogで紹介した記事がこちら)。
この一節は、対象がコモデティ製品を想定して書かれている本であるため、Web系のプロダクトであれば

『創って(開発)、グロースして(生産)、売る』

のほうがしっくりくるだろう。

2 / プロダクト鬼十則

さて、この三枝サイクルを最速で回すにあたり、肝に銘じておきたい10の教訓『プロダクト鬼十則』を作成した。

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  1. 良いプロダクトはチームで創るものであり、あなた一人で創るものではない。ましてやユーザーが与えてくれるものでもない。
  2. Feature(機能追加)とはユーザーに対し先手を仕掛けることで、模倣や受け身でやるものではない。
  3. 大きな課題に取組め! KPI固執は己を小さくする
  4. 難しいissueを狙え! そして成し遂げるところに進歩がある。
  5. issueに取組んだら放すな! 殺されても放すな! 議論はissueが始まる前に..
  6. チームを引きずり回せ! プロダクトを前に進めるのはあなただ。
  7. 計画より指針を持て! 指針があれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望とトラフィックが生まれる。
  8. 自信を持て! 自信が無いから君の仕様には、迫力も粘りも、そして厚みすらがない
  9. リソースは常に80%回転、20%の隙がなければ「新しいプロダクト」は生まれぬ!! 『創造』とはそのようなものだ。
  10. Pull Requestを怖れるな! レビューは進歩の母、積極の肥料だ。でないと君は卑屈未練になる。

プロダクトを創り、育て、世に問うという”創作活動”に関与されている皆様につきましては、何かを見失いそうになった時の指針としてデスクの角に張っておくと良いかもしれない。ちなみにあの『電通鬼十則』のオマージュであることは言うに及ばない。

3 / 電通鬼十則(オリジナル)

オマージュ元となった電通鬼十則の本文はこちら。

  1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。
  2. 仕事とは先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
  3. 大きな仕事と取組め! 小さな仕事は己を小さくする。
  4. 難しい仕事を狙え! そして成し遂げるところに進歩がある。
  5. 取組んだら放すな! 殺されても放すな! 目的を完遂するまでは...
  6. 周囲を引きずり回せ! 引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地の開きができる。
  7. 計画を持て! 長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
  8. 自信を持て! 自信が無いから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらがない。
  9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一部の隙もあってはならぬ!! サービスとはそのようなものだ。
  10. 摩擦を怖れるな! 摩擦は進歩の母、積極の肥料だ。でないと君は卑屈未練になる。

真の広告マンとしてあるべき姿を込めた鬼十則。仕事の性質からトッププレイヤーとしてある程度のスタンドプレーを許容する内容に見えないこともないが、仕事の本質をついた教訓に思える。

ちなみに僕が好きなのは1と5です。